西洋医学にはない“未病”という概念は、
漢方医学特有のものです。
漢方では、病気になってから治療するのではなく、
普段の生活において心身の状態を整え、より健康な
状態に近づけることを重視しています。
実際、飲酒や喫煙、ストレス、食生活など、
さまざまな生活習慣が病気の原因となりますが、
もっとも見過ごせないものの一つとしてあげられるのが
睡眠です。
デジタル機器の影響やストレス過多で不眠に悩む人は
多いですが、漢方では不眠が健康状態に大きく影響する
と考えられているのです。
そこで今回は、『芝大門 いまづ クリニック』の
今津嘉宏先生に、睡眠の重要性と不眠によい漢方薬を
お聞きしました。
■良質な睡眠の重要性
(1)肉体と精神の休息
レム睡眠は身体は休んでいても脳は活発に動いている
状態ですが、ノンレム睡眠は脳も身体も完全オフ状態
(微動だにしない状態)です。身体と心(脳)の両方が
しっかり休まります。
(2)記憶と忘却
ノンレム睡眠時に重要な記憶は定着し、嫌な事は忘れる、
という頭の中の整理整頓が進みます。
(3)成長ホルモン分泌
健康&美容に不可欠な成長ホルモンは、
ノンレム睡眠時に分泌します。
成長ホルモンは日中に傷ついた肌や骨、
筋肉などの組織や細胞の修復・再生・新生を
担うだけでなく、栄養のコントロールも行います。
(代謝亢進)
(4)免疫力アップ
睡眠時に分泌するメラトニンは抗酸化作用と
免疫賦活(めんえきふかつ)作用があるため、
免疫力アップだけでなく アンチエイジングにも。
■睡眠改善のための漢方薬
「睡眠薬のように直接眠りを誘発するのではなく、
根本原因へと働きかけ、睡眠の質を上げて、
心身の不調までも改善するのが漢方薬です。
不眠の場合もいきなり睡眠薬に頼るのではなく、
まずは生活習慣の改善から。それでも不調な場合は
漢方薬をおすすめしますが、なにより漢方薬による
睡眠改善はリバウンドがないため安心です」と今津先生。
今津先生がよく処方するのが、以下の二つです。
(1)抑肝散(よくかんさん)
不眠や睡眠障害の原因の多くが、精神
(感情・理性・情緒を司る中枢神経)。
漢方医学では、“気”の乱れが原因ですが、
抑肝散は神経(気)のネットワークの
バランスを整えてくれるため、イライラしたり、
感情のコントロールができずに不眠となっている
場合に最適です。
幼児から老人まで幅広く服用できます。
(2)五苓散(ごれいさん)
ふらつきやむくみ、めまい、耳鳴り、頭痛などの
体調不良からくる不眠があります。
これらの不調は末梢神経のアンバランスが原因
漢方医学的には、“水”の乱れで起こります。
水分代謝を整え、さらに痛みのモトとなる炎症を
抑制することで、快適な睡眠へと誘います。
■良質睡眠のための生活習慣改善ポイントは?
(1)体内時計をリセットするため朝の光を浴びる
(2)リズミカルな筋肉運動(歩行、咀嚼など)
(3)セロトニンの材料となるトリプトファンや
ビタミンB6を食事で積極的に摂る
(4)入眠時に体温が高いと寝入りやすいため、
入浴などで睡眠前に体温を高めておく
不眠は漢方の得意分野の一つです。
★ 私からのオススメです。
鍼灸治療で自律神経の働きを整えるとカラダ全体のバランスが
良くなり良い睡眠を得ることができます。
しっかりと睡眠を取ることが心身の健康の基盤になります。