寒い外気に触れたとき、皮膚にブツブツができてかゆみを
感じることはありませんか?
それは、寒冷蕁麻疹(じんましん)かもしれません。
また、暖房などの温かさが刺激となって発症する温熱蕁麻疹にも、
この時季は注意が必要です。
野村皮膚科医院(横浜市神奈川区)院長の野村有子先生に
詳しい症状と対策を教えていただきました。
「ウェザーニュース より」
◆“寒さ”で起きる蕁麻疹
皮膚がかゆくなり、ついバリバリ掻いてしまってはいないでしょうか。
「外気温が下がる冬は、寒冷蕁麻疹になる人が増えます」(野村先生)
寒冷蕁麻疹は、蕁麻疹の一種です。
蕁麻疹というと、食物アレルギーや細菌・ウイルス感染によるものの
イメージが強いのですが、摩擦や圧迫、日光、気温など物理的な刺激
により発症する「物理性蕁麻疹」もあります。
そのうち寒さや冷たさの刺激により発症するのが寒冷蕁麻疹です。
かゆみをともなった赤いブツブツや腫れが出ます。
「寒冷蕁麻疹は冷風に当たった頬や手の甲から出始めることが多く、
ひどくなると全身にかゆみや赤みが広まります。
しかし、かくとますますかゆくなる悪循環におちいります。
ですから、かくのを我慢して、身体を温めて安静にすると、
通常数分~30分で症状はおさまってきます」(野村先生)
寒冷蕁麻疹は、寒さに起因するので、防寒が発症予防のカギとなります。
外出するときは、コートやマフラー、手袋などを適切に着用し、
肌が寒気にさらされないようにしましょう。
「意外に多いのが、暖房で汗をかき、それが冷えて刺激となり
発症するケースです。
また、お風呂上がりに急激に冷えたり、冷たい飲み物で出ることもあります」(野村先生)
◆温かさが原因で発症する蕁麻疹も
寒冷蕁麻疹とは逆に、温かさが原因となる温熱蕁麻疹にも、
この時季は要注意です。
「温かさが刺激となって発症する温熱蕁麻疹は、
お腹や太ももの内側に発症しやすく、
カイロや暖房機などを使う機会が増える冬にもみられます。
刺激となる温 かさを減らすことで予防しましょう。
発症したら、濡れタオルなどで軽く冷やすことで、
数分~30分で症状はおさまってきます」(野村先生)
◆原因に気づかず、悪化させることも
実は、寒冷蕁麻疹や温熱蕁麻疹なのに、
その原因に気づいていない人も多いそうです。
「冬に起きるかゆみや肌の不調は乾燥が原因だと考え、
保湿で対策をしたつもりになっている人が多いのです。
もちろん乾燥しているときに肌の保湿は大切ですが、
それでは寒冷蕁麻疹が改善しません。
また、寒冷蕁麻疹なのにかゆみを抑えようと患部を冷やし、
かえって悪化させてしまうこともあるのです」(野村先生)
さらに、温度差以外にも気をつけたいことがあります。
「爪を切っておくのも大切です。寝ているときなど、
無意識に掻いて悪化させてしまうからです。
特に小さなお子さんは、こまめに切って上げてください。
もう一つ、ストレスも蕁麻疹が出やすくなる要因です。
できるだけ、ストレスや疲れを溜めないようにすることも大切です」(野村先生)
◆病院に行くタイミングは?
寒冷蕁麻疹も温熱蕁麻疹も「かゆみぐらい」と軽視してはいけません。
皮膚を掻き壊してしまったり、長引くと慢性化して治りにくくなって
しまうこともあります。
「蕁麻疹が数日続いたり、繰り返したり、徐々に悪化する場合は、
早めに病院を受診した方がいいでしょう。
かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン剤などの内服薬できちんと
治療する必要があります」(野村先生)
まれに寒冷蕁麻疹や温熱蕁麻疹が気道で発症して呼吸困難になったり、
消化器官で発症して嘔吐や腹痛が出るケースもあります。
「普段から、寒冷蕁麻疹・温熱蕁麻疹が出やすい人は、注意が必要です。
息苦しさや、のどのかゆみ、全身のむくみ、めまいなどの症状が見られる場合は、
すぐに医療機関で診てもらってください。
他のタイプの蕁麻疹や免疫異常など、他の病気の可能性もあるので、
治りにくい 場合も受診をお薦めします」(野村先生)
寒冷蕁麻疹も温熱蕁麻疹も、急な温度の変化を避けるのがポイント。
適切な寒さ対策を心がけましょう。
ウェザーニュース より