今回は、精神医療の最先端イェール大学で学び、
ロサンゼルス郡でクリニックを開業する精神科医の久賀谷亮さんの著書
『世界のエリートがやっている最高の休息法
脳科学×瞑想で集中力が高まる』から、
脳の休め方をご紹介しようと思います。
「一日中何もしなかったのに、なぜか疲れがとれない」
ということよくありませんか?
それは体は休んでいても、頭が絶えず考え事を続け、
脳がエネルギーを消耗しやすくなっているからなのです。
◆ 脳が疲れる理由
「しばしばいわれることですが、脳は体重の2%ほどの
大きさにもかかわらず、体が消費する全エネルギーの20%を使う大食漢です。
この脳の消費エネルギーの大半は、
デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という
脳回路に使われています」と久賀谷さん。
DMNとは、内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、下頭頂小葉などから
構成される脳内ネットワークで、脳が意識的な活動をしていないとき、
いわばアイドリング状態でも動き続ける脳回路です。
このDMNは脳の消費エネルギーの60~80%を占めているとされ、
これがぼーっとしていても、脳が疲れていく理由です。
そこで今注目されているのが、脳を科学的に休める方法。
いわゆる“マインドフルネス”というもので、
アメリカではここ数年、爆発的に流行しています。
◆ 脳疲労を解消する休息法「マインドフルネス」
少し難しそうなマインドフルネスですが、いつでもどこでもできる
久賀谷さん直伝の方法を簡単にまとめていきます。
“とにかく脳が疲れているとき”と、“気づくと考え事をしているとき”
2つのパターンについて解消法をみていきます。
【とにかく脳が疲れているとき】
注意散漫、無気力、イライラといったサインが出たら、
脳が疲れている証拠だそうです。
そんなときは、“現在”に意識を向けるようにして、
疲れづらい脳をつくっていきましょう。
(1)基本姿勢をとる
・椅子に座る(背筋を軽く伸ばし、背もたれから離して)
・お腹はゆったり、手は太ももの上、脚は組まない
・目は閉じる(開ける場合は、2mくらい先を見る)
(2)体の感覚に意識を向ける
・接触の感覚(足の裏と床、お尻と椅子、手と太ももなど)
・体の重さを感じる
(3)呼吸に注意を向ける
・呼吸に関わる感覚を意識する
(鼻を通る空気/空気の出入りによる胸・お腹の上下/
呼吸と呼吸の切れ目/それぞれの呼吸の深さ/
吸う息と吐く息の温度の違いなど)
・深呼吸や呼吸コントロールは不要
・呼吸を1、2~10と数えるのも効果的
(4)雑念が浮かんだら……
・雑念が浮かんだ事実に気づき注意を呼吸に戻す
(呼吸に意識を向けることで過去や未来ではなく
現在に意識を戻すことができます)
・雑念は生じて当然なので、自分を責めない
【気づくと考えごとをしているとき】
現代はマルチタスクの時代です。
誰もが何かをしながら別のことをしています。
このような“自動操縦モード”になっているときほど、
頭には雑念が浮かびやすくなります。
これが常態化すると集中力や注意力の低下に繋がります。
そんなときは、“ムーブメント瞑想”を取り入れてみましょう。
(1)歩行瞑想
・スピードは自由だが、最初はゆっくり歩くのがおすすめ
・手脚の筋肉・関節の動き、地面と接触する感覚に注意を向ける
・自分の動き(ムーブメント)、右脚を上げたら「右」、
左足を上げたら「左」というように動きを一つ一つ意識する
(2)立った姿勢でムーブメント瞑想
・足を肩幅に開いて立ち、伸ばした両腕を左右からゆっくり上げていく
・腕の筋肉の動き、血液が下がってくる感じ、重力に意識を向ける
・上まで来たら、今度はゆっくり下げながら、同じ動きを繰り返す
(3)座った姿勢でムーブメント瞑想
・椅子に座った状態で、後ろから前にゆっくり両肩を回す
・筋肉や関節などの動き・感覚へ細かく注意を向ける
・一周したら、逆に肩を回しながら、動き・感覚へ注意を向ける
(4)そのほかこんな方法も
・日常の動き(服を着る/歯を磨くなど)に意識を向ける
・自動車の運転中に、シートとお尻が触れている感覚、
手がハンドルに触れている感覚、ハンドルをきったり
プレーキを踏んだりするときの筋肉や関節の動きに注意を向ける
(くれぐれも事故には注意してください)
・ラジオ体操をやりながら、身体の動きや感覚を意識する
アップル社創設者の一人であるスティーブ・ジョブズが
瞑想の実践者だったことはあまりに有名ですが、
現在では脳科学的に実証された休息法としてグーグルや
フェイスブック、シスコ、パタゴニアといった大企業も
瞑想に着目しています。
マインドフルネスを継続して行うことで、
疲れにくい脳が手に入ることができます。
忙しいときほど取り入れてみるといいでしょう。